高齢での引退を考えている歯科クリニックの経営者にとって、クリニックの売却は大きな決断です。この記事では、神奈川県にある歯科クリニックの売却事例を紹介します。譲渡を成功させるためのポイントや、売却後の状況などを具体的に見ていきます。この事例を通じて、クリニックの閉院を考える方がどのように売却を進めればよいかの参考にしていただければと思います。
売り主様について
今回の事例の売り主であるD先生は、神奈川県で長年歯科クリニックを経営されてきました。しかし、年齢とともに引退を考えるようになり、クリニックの将来をどうするか悩まれていました。D先生はすでに高齢であり、患者様への対応やクリニック運営の負担が重くなってきたこともあり、譲渡を決意されました。
D先生のクリニックは、先生自身が所有する一棟マンションの1階にあり、この場所に対する思い入れも強いものでした。そのため、譲渡後もクリニックがうまく運営され続けることを望んでいました。今回のM&Aは、D先生の引退後もクリニックが存続することを願って行われたのです。
買い主様について
買い主であるK先生は、現在本院を運営しており、分院を展開することを検討されていました。K先生にとって、D先生のクリニックは理想的な立地であり、既存の患者層も魅力的でした。また、クリニックの運営ノウハウを本院と共有できる点や、スタッフの引き継ぎがスムーズにできると見込まれたことも大きな決め手となりました。
K先生は、これまでにも複数のM&A案件を検討していましたが、今回のケースはD先生の想いや歴史が反映されたクリニックであることが特に魅力的でした。最終的に、直接的な交渉を経て、今回の譲渡が決まりました。
M&Aに至った経緯
D先生はクリニックの将来を悩んでいた時期に、日頃取引のある歯科材料業者に「そろそろ引退を考えている」と相談されました。この材料業者が、K先生が分院展開を希望していることを思い出し、両者を引き合わせることが今回のM&Aのきっかけとなりました。
その後、K先生から当社に協力の依頼があり、法人譲渡の手続きを進めることとなりました。M&Aの過程では、行政書士のT先生と共に各種契約書の作成や手続きのサポートを行い、無事に譲渡が完了しました。クリニックの譲渡においては、単なる売買契約だけでなく、引き継ぎ後の運営がスムーズに行われるよう配慮することが重要です。
M&Aで気をつけたポイント
M&Aを進めるにあたって、いくつかの重要なポイントがありました。まず、D先生がクリニックの入っている物件を個人所有しているため、譲渡後はD先生が大家、K先生が店子という関係になります。このため、K先生の経営が順調にいかないと、D先生にも影響が及ぶ可能性があるため、双方にとってリスクが少ない形での譲渡が求められました。
また、患者様に対するアナウンスが非常に重要でした。突然の経営者変更に対する不安を軽減するため、患者様への丁寧な説明を行い、安心して引き続き通院いただけるよう努めました。さらに、D先生のお嬢様(歯科医師)がK先生と正式な雇用契約を結び、譲渡後もクリニックでの診療を続けることで、患者様の信頼を維持することができました。
M&A後の状況
譲渡から約1年が経過し、クリニックは順調に運営されています。K先生の経営手腕により、売上は着実に増加しており、D先生も安心してクリニックの成長を見守っています。患者様の離反もなく、むしろ新規患者の増加も見られる状況です。
K先生は、引き継ぎ当初からスタッフとのコミュニケーションを重視し、従業員のモチベーション向上にも努めました。これにより、クリニック全体の雰囲気も良くなり、地域に密着した医療提供ができています。
当社を選んでいただいた理由
今回のM&Aにおいて、D先生とK先生の双方が当社を選んでいただいた理由として、信頼できるサポート体制と実績が挙げられます。譲渡手続きだけでなく、譲渡後の運営についてもアドバイスを行い、D先生とK先生の不安を取り除くことに努めました。
特に、当社がM&Aに強い行政書士との連携を持っている点が、安心感を与える要因となりました。契約内容の調整やスムーズな手続きの進行により、両者の負担を最小限に抑え、円満な譲渡が実現しました。
まとめ
今回の事例は、高齢で引退を考える歯科医師がクリニックの未来を託すために、慎重に譲渡を進めた成功事例です。売り手、買い手双方の思いや希望を大切にし、円滑な引き継ぎを行うことで、クリニックは新たなステージへと進むことができました。
これから歯科クリニックの譲渡を考えている方も、この事例を参考にして、自身のクリニックの将来をどのように託すかを考えてみてください。M&Aは単なる売買ではなく、次の世代へのバトンタッチです。その過程での配慮と努力が、後の成功につながることでしょう。