
歯科医院のM&A(企業の合併・買収)は、医院の経営戦略として近年注目されています。しかし、「買収」と「合併」という2つの手法の違いについて、正確に理解している方は意外と少ないかもしれません。売却や購入を検討している歯科医師にとって、この違いを理解することは非常に重要です。
本記事では、歯科医院M&Aにおける「買収」と「合併」の基本的な違いをわかりやすく解説します。それぞれのメリット・デメリットを把握し、自分に合った選択ができるようにしましょう。
歯科医院M&Aにおける「買収」と「合併」とは?
M&A(Mergers and Acquisitions)は、「合併(Mergers)」と「買収(Acquisitions)」の総称です。どちらも歯科医院の事業承継や経営戦略として活用されますが、それぞれの特徴や進め方は異なります。
買収とは、一方の歯科医院が別の歯科医院を取得することを指します。対して、合併は複数の医院が統合し、1つの新しい医院を形成する方法です。それぞれの手法には、異なるメリットとリスクがあるため、自身の状況に応じた選択が重要です。
以下では、「買収」と「合併」の詳細な違いを解説していきます。
買収とは?その特徴とメリット・デメリット
買収の特徴
買収とは、ある歯科医院が他の医院を取得し、経営権を握ることを指します。買収の方法には、株式譲渡や事業譲渡などがあり、売り手側の医院はその対価として売却益を得ます。
買収には「友好的買収」と「敵対的買収」の2種類がありますが、歯科医院M&Aでは基本的に売り手と買い手の合意に基づいた「友好的買収」が主流です。
買収のメリット
- 即戦力の獲得が可能
買収により、すでに運営されている歯科医院をそのまま取得できるため、ゼロからの開業と比べて即戦力となります。 - 顧客・スタッフの引き継ぎがスムーズ
既存の患者やスタッフ、設備をそのまま継承できるため、医院運営がスムーズに継続できます。 - 収益性が見込める
すでに一定の売上がある医院を買収すれば、安定した経営をすぐに実現できます。
買収のデメリット
- 既存の経営スタイルに適応する必要がある
既存の医院の文化や診療スタイルを受け継ぐため、自分の理想と完全に一致しない可能性があります。 - 患者やスタッフの離脱リスク
買収後の経営方針が変わると、患者やスタッフが離れるリスクも考慮する必要があります。
合併とは?その特徴とメリット・デメリット
合併の特徴
合併とは、2つ以上の歯科医院が1つに統合され、新しい法人や医院として生まれ変わることを指します。
合併の種類には「吸収合併」と「新設合併」があります。吸収合併では、一方の医院が存続し、もう一方の医院が吸収される形になります。一方、新設合併では、両医院が解散し、新たな医院として再スタートします。
合併のメリット
- 経営基盤の強化
規模を拡大することで、経営の安定性が向上し、競争力が高まります。 - コスト削減が可能
医療機器の共同利用や、広告・経営管理費の統合により、運営コストを削減できます。 - 診療範囲の拡大
例えば、小児歯科専門と一般歯科の医院が合併すれば、より幅広い患者層をカバーできるようになります。
合併のデメリット
- 意思決定に時間がかかる
複数の医院が関わるため、経営方針の調整や意思決定に時間がかかる場合があります。 - 文化の違いによる摩擦
それぞれの医院の診療方針や経営理念が異なると、統合後にスタッフや患者が混乱する可能性があります。 - 新しい経営体制の構築が必要
合併後は新たな法人としての運営が求められるため、組織体制や管理システムを整える必要があります。
買収と合併、どちらを選ぶべきか?
買収と合併にはそれぞれメリットとデメリットがあります。どちらを選ぶべきかは、以下のポイントを考慮することが重要です。
- スピーディに経営を始めたいなら「買収」
既存の歯科医院を買収すれば、すぐに運営を開始でき、収益化もスムーズです。 - 経営基盤を強化しながら統合したいなら「合併」
規模拡大や経営資源の統合を目的とする場合は、合併のほうが有利です。 - 資金面を考慮するなら「合併」
買収は高額な資金が必要になることが多いため、資金面での負担を抑えたい場合は、合併のほうが適しているかもしれません。
まとめ
歯科医院M&Aにおける「買収」と「合併」は、それぞれ異なる特徴を持っています。
- 買収は、既存の医院をそのまま取得することで、スピーディな経営開始が可能。
- 合併は、複数の医院を統合し、より強固な経営基盤を築く手法。
どちらを選ぶべきかは、医院の現状や経営方針、資金状況によって異なります。M&Aを成功させるためには、それぞれのメリットとリスクをしっかり理解し、自分に最適な選択を行うことが大切です。
歯科医院の売却や購入を検討している方は、専門家に相談しながら慎重に進めましょう。