承継・開業サポート事例

歯科クリニックの売却事例 親族の経営するクリニック譲渡

歯科クリニックを運営しながら引退や事業譲渡を考える時、最適なタイミングや後任者の選定は大きな課題になります。本記事では、東京都で実際に行われたM&Aの事例を紹介します。分院を売却した後、改めてクリニックを再開するまでの経緯や、M&Aでの重要なポイントについて解説します。同様の悩みを抱える方にとって、将来の方向性を考えるヒントとなるでしょう。

売り主様について

売り主は、M先生。彼は父親が理事長を務めていた本院と、自身は分院を管理していました。しかし、2023年に父親が他界したことで、家族での経営方針が変わり、分院の閉鎖を検討することになりました。

M先生は、本院に注力するために分院を手放すことを決めますが、閉院ではなく、クリニックを誰かに譲渡することができれば、地域の患者さんにとっても負担が少なく済むと考えました。売却後も地域医療に貢献できる形を模索するのがM先生の大きな目標でした。

買い主様について

買い主であるO先生は、勤務医としての経験を積んでいましたが、自身のクリニックを開業するという夢を持っていました。しかし、開業には多額の初期投資が必要であり、従業員を多く抱えない小規模クリニックを希望していたO先生にとって、「居抜き物件」は理想的な選択肢でした。

分院の譲渡話を聞いたO先生は、既存の設備や立地を活かしながら無理なく経営をスタートできると判断し、この案件に関心を持ちました。

M&Aに至った経緯

このM&A案件は、2021年10月頃から進行していました。M先生の父親である理事長が高齢で体調不良を理由にクリニックの売却を考えていた時期に、当社が電話営業を通じて面談を実現しました。当初、父親とM先生は事業の承継について話し合っていましたが、意見の相違もあり、スムーズには進みませんでした。

2023年までの間も当社は定期的に理事長と面談を重ね、タイミングを見計らって譲渡の準備を進めていました。しかし、理事長が2024年に亡くなったことを受け、分院の売却が急務となり、M&A案件として正式に進めることが決まりました。

M&Aで気をつけたポイント

本案件で特に重要だったのは、スケジュール管理です。分院のスタッフはすでに本院に引き上げられ、患者さんには閉院がアナウンスされていました。また、産業廃棄物の処理やスケルトン工事の準備も進行しており、不動産管理会社との交渉も始まっていたため、譲渡の可否が一定期間内に決まる必要がありました。

当社はこの限られた時間内で、買い手候補を集め、O先生とのマッチングを成功させました。迅速な交渉と双方のニーズを理解することで、「閉院」という最悪のシナリオを回避することができたのです。

M&A後の状況

譲渡後、O先生は分院の経営を再開し、シンプルかつ効率的な経営を目指しました。M先生がこれまで使用していた設備をそのまま活用することで、初期費用を抑えることができたのも大きなメリットです。

また、O先生は少人数のスタッフ体制で運営することを選び、無理のない規模で着実に患者さんを増やしています。閉院のアナウンスがあったにもかかわらず、多くの患者さんが再び通院してくれるようになり、地域での信頼を徐々に取り戻しているとのことです。

当社を選んでいただいた理由

M先生とO先生が当社を選んでいただいた理由は、柔軟かつ迅速な対応力でした。分院の譲渡案件は、閉院が決まっていたため、通常のM&A案件よりも短い期間での対応が求められました。当社は、短期間でのマッチングと交渉を進めるだけでなく、不動産管理会社や工事業者との連携もスムーズに行い、トラブルなく譲渡を完了させました。

また、売却後の経営再開に向けてのアドバイスやサポートを提供したことも、M先生とO先生にとって大きな安心材料となりました。クリニック経営の専門知識と実績に基づく当社のサポートが、今回の成功につながったのです。

まとめ

今回の事例は、閉院が決まっていた分院を「居抜き物件」として譲渡し、無駄のないスムーズなM&Aを実現した好例です。

短期間での交渉や、買い手と売り手双方のニーズを的確に把握することが、M&A成功のカギとなりました。また、M先生が地域医療に貢献し続けるための選択として、分院の再開が実現した点も大きな成果といえるでしょう。

今後、歯科クリニックの売却や引退を考えている方にとっても、今回の事例は多くの示唆を与えるはずです。短期間での対応が求められるケースでも、適切なサポートを受けながら進めることで、理想的な結果を得ることができるでしょう。