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退職金にかかる税金とは?退職金にかかる税金と計算方法の基礎知識

退職金を受け取る際、どのような税金がかかるのかを理解しておくことは重要です。この記事では、退職金に関する税金の基本的な知識と計算方法をわかりやすく解説します。これから退職を迎える方にとって、適切な税金対策を施し、退職金を効率よく受け取るための参考にしていただければ幸いです。

退職金にかかる税金の種類

退職金には複数の税金がかかります。主に、復興特別所得税、所得税、住民税の3種類があります。これらの税金について理解しておくことで、退職金を受け取る際の計画を立てやすくなります。

復興特別所得税

復興特別所得税は、東日本大震災からの復興を支援するために導入された税金です。この税金は所得税に対して追加で課されます。具体的には、所得税額の2.1%が復興特別所得税として課されます。退職金にも適用されるため、所得税と共に考慮する必要があります。

所得税

所得税は、退職金にも課される主要な税金の一つです。しかし、退職金には特別な計算方法が適用されます。まず、退職所得控除という特別な控除が適用され、控除後の金額に対して税率が適用されます。この控除によって、退職金に対する税負担が軽減されます。

住民税

住民税は、地方自治体に支払う税金であり、退職金にも課されます。住民税は「均等割」と「所得割」の合計で計算されます。「均等割」は一定の所得を上回る全ての人に一律で課される税金で、各自治体によって異なります。「所得割」は前年の所得に応じて課される税金で、退職金にも適用されます。住民税の税率は自治体によって異なりますが、一般的には一律10%(道府県民税と都民税は6%、道府県民税と都民税4%)です。 ただし、一定の所得以下の人には所得割もしくは均等割は課税されません。

退職金の受け取り方別課税方法と控除額の計算方法とは

退職金の受け取り方には、一時金として一括で受け取る方法、年金形式で分割して受け取る方法、そしてその両方を併用する方法の三つがあります。それぞれの方法には異なる課税方法や控除額が適用されます。

退職金を一時金で受け取る場合

一時金で受け取る場合、退職金は退職所得として扱われます。退職所得には退職所得控除が適用され、控除後の金額に対して税金が課されます。控除額は勤務年数に応じて決まります。例えば、20年間勤務した場合、退職所得控除額は800万円です。控除後の金額は、2分の1に軽減され、その後の課税所得として計算されます。

退職所得控除の計算方法

勤続年数 退職金控除の計算式
20年以下 40万円×勤続年数 ※80万円に満たない場合80万円
20年以上 800万円+70万円×(勤続年数ー20年)

退職所得の計算式

退職所得=(収入金額 ※源泉徴収される前の金額)ー 退職所得控除額×1/2

<参考>

退職所得の計算方法は、国税庁のホームページに掲載されています。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_3.htm

退職金を年金で受け取る場合

年金形式で受け取る場合、退職金は公的年金等の雑所得として扱われます。この場合、年金控除が適用され、控除後の金額に対して所得税が課されます。年金形式での受け取りは、一時金に比べて税負担が分散されるため、年間の所得が一定額以下の場合には税金が軽減される可能性があります。

所得(年金以外)が1,000万円以下の場合の公的年金等控除額

年齢 公的年金等の収入金額 公的年金等控除額
65歳未満 130万円未満 60万円
130万円以上、410万円未満 収入金額 × 25% + 275,000円
410万円以上、770万円未満 収入金額 × 15% + 685,000円
770万円以上、1000万円未満 収入金額 × 5% + 1,455,000円
1000万円以上 1,955,000円(上限)
65歳以上 330万円未満 110万円
330万円以上、410万円未満 収入金額 × 25% + 275,000円
410万円以上、770万円未満 収入金額 × 15% + 685,000円
770万円以上、1000万円未満 収入金額 × 5% + 1,455,000円
1,000万円以上 1,955,000円(上限)

雑所得の計算式

雑所得=(退職金による年金や公的年金などの所得金額)ー 公的年金等控除額

年金以外の合計所得金額が1,000万円以上になる場合は、公的年金等控除額が変わってくるので、国税庁や住んでいる自治体のホームページなどで確認しましょう。

退職金を一時金と年金を併用して受け取る場合

一時金と年金を併用する場合、それぞれの受け取り方に応じた課税方法が適用されます。一部を一時金として受け取り、残りを年金として受け取ることで、税負担を分散することができます。この方法は、退職金の総額や個人のライフプランに応じて柔軟に対応できるため、多くの方にとって有効な選択肢となるでしょう。

退職金の税金シミュレーション

具体的な税額を知るためには、シミュレーションを行うことが有効です。以下に、一時金で受け取る場合と年金で受け取る場合のシミュレーション例を示します。

一時金で受け取る場合

例えば、退職金が2,500万円の場合、まず退職所得控除額を計算します。勤務年数が30年の場合、控除額は1,500万円となります。残りの1,000万円が課税対象となり、この金額を2分の1に軽減して500万円が課税所得となります。この500万円に対して所得税と復興特別所得税が課されます。

退職所得控除の計算式

800万円+70万円×(30年ー20年)= 1,500万円

退職所得の計算式(所得金額が450万円の場合)

(2,500万円 - 1,500万円)× 1/2 = 500万円

所得税額の計算式

500万円 × 20% - 427,500円 = 572,500円

復興特別所得税の計算式

572,500円 × 2.1% = 12,023円

住民税(所得割)の計算式

500万円 × 10% = 50万円

所得割 + 均等割 の計算式

50万円 + 5,000円 = 505,000円

年金で受け取る場合

同じく2,500万円を年金形式で受け取る場合、年間の受け取り額に応じて年金控除が適用されます。例えば、年間200万円を受け取る場合、年金控除額は70万円となり、残りの130万円が課税対象となります。この金額に対して所得税が課されます。年金形式の場合、税負担が毎年分散されるため、トータルの税額が一時金に比べて軽減されることが多いです。

退職金の確定申告は必要?

退職金に関して確定申告が必要かどうかは、場合によります。基本的には退職金を受け取る際には源泉徴収が行われるため、確定申告は不要です。しかし、特定の条件下では確定申告を行った方が有利になる場合があります。

確定申告をした方がいい場合

例えば、他に所得が少ない場合や、多額の医療費控除が適用される場合など、確定申告を行うことで税金の還付が受けられることがあります。また、退職後の生活設計を見直す際には、確定申告を行うことで正確な税額を把握することが重要です。

<参考:確定申告をした方が良い場合>

  • 10万円超の医療費がかかった⇒医療費控除
  • 生命保険料を支払った⇒生命保険料控除
  • 市販の特定医薬品の購入費が12,000円超だった⇒セルフメディケーション税制
  • 地震保険料を支払った⇒地震保険料控除
  • 再就職をせず国民年金保険料や国民健康保険料を支払った⇒社会保険料控除
  • iDeCoの掛金を支払った⇒小規模企業共済等掛金控除 など

まとめ 退職金の基礎知識が必要な理由

退職金は人生の大きな節目であり、その受け取り方や税金対策を正しく理解しておくことは非常に重要です。この記事を通じて、退職金に関する基本的な知識と、具体的な税金の計算方法について理解を深めていただけたでしょうか。今後のプランニングに役立てていただき、安心して退職後の生活を迎えてください。

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