近年、医療業界ではクリニックや医療法人の買収が増加しています。
買収により、事業の拡大や新たな患者層の獲得、シナジー効果の追求などの目的がありますが、一方でリスクも伴います。
対象クリニックの財務状況、簿外債務、患者と診療圏を確認することは、事業承継後の成功に向けて重要なポイントとなります。
それぞれのポイントを順に説明します。
対象クリニックの財務状況の確認
クリニックの財務状況を正確に把握することは、事業承継後の成功にとって重要事項です。
以下の項目を詳細に確認する必要があります。
1.棚卸資産の確認
棚卸資産には在庫や消耗品などが含まれます。クリニックが保有する在庫の評価とそのリスクを正確に把握することで、将来の収益予測やキャッシュフローの評価が可能になります。
2. 有形固定資産の確認
有形固定資産には建物、医療機器などが含まれます。これらの資産の価値を正確に把握し、適切な減価償却計算を行うことで、クリニックの実態をより正確に把握できます。
3. 未収入金の確認
クリニックは、まだ収益として計上されていないが患者からの支払いがある場合があります。未収入金を確認することで、将来のキャッシュフローの予測や売上の実態を把握することが重要です。
対象クリニックの簿外債務の確認
簿外債務は、クリニックが帳簿に計上していないが将来的に支払いが必要な債務を指します。これらの債務を見逃すと、買収後に予期せぬ負担が生じる可能性があります。以下の点を特に確認する必要があります。
1. 未計上の債務
クリニックが簿外に計上していない債務があるかを確認します。例えば、未払いのベンダー料金、損害賠償責任、未払いの税金などがこれに該当します。
2. 契約上の義務
契約上、将来的に支払いが必要な契約を把握します。これには、診療報酬や従業員の給与、賃貸料、リース料などが含まれます。
3. 不良債権のリスク
クリニックが患者から回収不能と判断した債権がある場合、それを評価し、リスクを正確に把握することが重要です。
患者と診療圏の確認
買収対象のクリニックが位置する診療圏や患者層を理解することは、将来の事業展開において不可欠です。以下の点を確認することが重要です。
1. 患者層の分析
クリニックがどのような患者層に支持されているかを分析します。これには、患者の年齢層、性別、地域性などが含まれます。
2. 競合他院との比較
買収対象のクリニックが所在する地域における競合他院を調査し、市場シェアやサービス提供の差別化などを理解します。
3. 将来の成長見込み
診療圏の将来的な成長見込みを評価し、買収後の成長戦略に活かすことが重要です。
これらのポイントを徹底的に調査・分析することで、クリニック・医療法人の買収におけるリスクを最小限に抑え、成功に近づけることができるでしょう。ただし、には多くの専門知識とリソースが必要であり、以下のようなポイントにも留意することが重要です。
法的・規制面の確認
クリニック・医療法人の買収は、厳格な法的および規制上の要件を満たす必要があります。適切なライセンスや資格を取得しているか、法律に違反していないか、患者のプライバシーや患者権利に違反するような問題がないかなど、法的な側面を精査することが重要です。
1. スタッフとのコミュニケーション
買収後、スタッフとの円滑なコミュニケーションが重要です。スタッフの意向や不安を理解し、新しい経営者としてのビジョンを共有することで、スタッフの定着率を高め、業務の安定性を保つことができます。
2.デューデリジェンス(尽職調査)の徹底
買収にはデューデリジェンスが欠かせません。これは、対象クリニックの財務情報や法的問題、事業戦略などを詳細に調査・分析するプロセスです。信頼性の高い第三者によるデューデリジェンスを行い、情報の正確性と完全性を保証することが重要です。
3.統合計画の策定
買収後の統合計画を事前に策定することが必要です。統合計画には、経営統合のスケジュールや戦略、人事統合、ブランド統合、システム統合などが含まれます。計画を進める際には、スムーズな経営移行と従業員の安心感を確保することが大切です。
4.クリニックの評価と適切な価格の設定
買収対象のクリニックの評価と適切な価格設定が成功に重要な要素です。買収対象のクリニックの将来のキャッシュフローや事業価値を正確に評価し、公正な価格を設定することで、購入側と売却側の双方にメリットをもたらすことができます。
まとめ
以上のポイントを念頭に置いて、クリニック・医療法人の買収を慎重に検討し、成功に導くことが大切です。リスク管理と適切な戦略の策定が、買収における成功の鍵となります。ただし、買収プロセスは複雑で時間を要することがありますので、専門家の助言を仰ぐことをお勧めします。
院継では、クリニックや医療法人の事業承継のサポートも行っております。
引き継ぎ開始から永続的な発展に寄与することまでを念頭に事業承継に携わっています。
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